猫の腫瘍~発見から手術までの完全記録~
こんにちは、獣医師の川上です。
前回はCT検査が本格的に稼働したお知らせをさせていただきました。
今回は、CT検査の結果を元に手術・治療を行い回復した猫のピアちゃんのお話をさせていただこうと思います。
※本ブログには手術中の写真を掲載しております。大変恐縮ですが、苦手な方はご注意をお願いいたします。
なんだか元気が無い気がする...
事の発端は『なんだか最近食欲が落ちた気がする』との主訴でした。
ピアちゃんは体重が7kgとややぽっちゃりの猫ちゃんなので、『肝リピドーシス』という肥満傾向の猫ちゃんが罹ると命に関わることもある病気になっていないかどうかの検査をしました。
具体的には血液検査・レントゲン・超音波検査です。
血液検査は大きな異常を示す項目は見られず、肝リピドーシスは否定されましたが、レントゲン検査にて心臓の影が大きくなっている(画像のオレンジ矢印)のが確認されました。

健常な猫ちゃんと比較すると、矢印で示している心臓の陰影がとても大きいことが分かります

また、超音波検査においては心臓の真横に本来あるはずのない構造物が見られました。

どうやら心臓そのものが大きくなったり変形しているのではなく、心臓の横になにかできものが存在しているようです。
前胸部に出現する腫瘤として、リンパ腫などの悪性腫瘍や胸腺腫などがあげられるため、更なる精査が必要になります。
CT検査実施へ
レントゲン検査や心エコー検査では腫瘍の存在は確認できても、腫瘍の正確な大きさ・周囲の臓器への浸潤・大きな血管との位置関係まで等は正確に描出することができない場合がほとんどです。
CTでは腫瘍の全容や多臓器への転移まで詳細に描出することができ、外科手術適応になった際のガイドラインだけではなく転移に伴う予後の推察の一助にもなることがあります。
CT検査の結果、ピアちゃんの胸部には心臓に隣接する腫瘍性病変が確認されました。

また、肺の一部が腫瘍に圧迫されて空気を含むことができず潰れてしまう『無気肺』の所見(画像のオレンジ丸)も見られます

いよいよ手術!!
各検査の結果が整い、外科手術にてピアちゃんの胸腔にできた腫瘍を摘出することになりました。
今回行う術式は肋骨を切り開く開胸術という方法で、術中の急変や出血・激烈な痛みを伴う可能性が非常に高いリスクの高い手術です。
当院と提携してご指導下さっている、麻酔科医でもある藤本 鉄平先生に麻酔管理をご協力し、万全の状態での手術開始となりました。

胸を開くと腫瘍が現れました。ピアちゃんの小さな身体にとってはとても大きいです。

胸腔の内側や心臓に接触している部分を、血管が破れて出血しないように慎重に剥離していきます。

摘出された腫瘍。全長6cmでした。

腫瘍の摘出後、圧迫されて無気肺になっていた肺が膨らみ始めました。
手術が終わったら...
無事に手術が終わりましたが、前述の通りとても大きな規模の手術でしたので、
術後の痛みのコントロールや、摘出した胸部の腫瘍があった場所に胸水が溜まることがあるのでドレーンでの排水管理が必要です。

また、摘出した腫瘍の中に含まれる細胞が悪性か良性かを診断する病理組織検査を依頼し、結果を待ちます。
猫ちゃんやわんちゃんの性格や手術の規模によって入院期間は様々ですが、ピアちゃんは驚異の回復力で術後3日での退院となりました。
術後は傷口を舐めないためのエリザベスカラーの装着や、退院してからのお家での過ごし方の注意点などを説明したら退院です。
よく頑張りましたピアちゃん!!✨
術後の経過観察
退院した後は、経過観察として数日おきに受診してもらい、お家での食欲/排泄や体調・手術でできたの傷の具合などをチェックします。
傷口が開いてしまったり感染がなければ2週間ほどで抜糸となることがほとんどです。
また、病理組織検査の結果を元に今後の方針を説明します。
ピアちゃんの場合は年に数回の健診(レントゲン・血液検査・エコー)での経過観察となりました。
さいごに
今回は当院で偶発的に見つかった病変の発見からCT検査⇒手術までの一連の流れを当院で完結できました。
今までは、外部の動物病院さんにCT検査を依頼していたので手術までに時間を要していました。
悪性腫瘍の場合ですとその間に転移が進んだり病態の悪化が進行することもありますが、当院にCT機器を搭載してからそのタイムラグを縮めることができるようになったことで病変の発見から手術までを迅速に対応できるようになりました。
最近、他院さんからの依頼でCT撮影のご相談にいらっしゃる飼い主様も増えてきました。
気になる症状や健診などのご相談も随時承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。


