犬や猫のIBD(炎症性腸疾患)とは?|内視鏡で見つける慢性胃腸トラブルの原因
愛犬や愛猫が「何度も胃腸炎を繰り返している」「下痢が長引いていて治らない」といった症状に心当たりはありませんか? 一見すると、食べすぎやちょっとした体調不良に見えるこうした消化器症状ですが、実は「IBD(炎症性腸疾患)」と呼ばれる慢性的な病気が隠れている可能性があります。
IBDは、胃や腸の粘膜に慢性的な炎症が起こる病気で、早期に発見して適切な治療を行うことが、犬や猫の健康を守るうえで非常に重要です。
今回は犬や猫のIBD(炎症性腸疾患)について、症状や原因、診断方法、治療方法などをご紹介します。

■目次
1.IBD(炎症性腸疾患)とは?
2.見落とされがちな症状と気づきのサイン
3.原因
4.診断方法
5.治療方法と予後管理
6.まとめ
IBD(炎症性腸疾患)とは?
IBD(Inflammatory Bowel Disease)とは、胃や腸の粘膜に慢性的な炎症が起こる疾患です。炎症が持続することで消化・吸収機能が低下し、食欲の低下や体重の減少、栄養不良といった全身症状を引き起こすことがあります。
通常の胃腸炎は一時的な炎症で自然に回復することもありますが、IBDは「再発を繰り返す」「慢性化しやすい」という特徴があります。さらに、原因が複雑に絡み合っているため、明確にひとつの要因に絞れないのもこの病気の難しい点です。
特に、猫では「リンパ球性腸炎」と呼ばれるタイプが代表的で、免疫系の異常な反応が炎症の一因とされています。
見落とされがちな症状と気づきのサイン
犬や猫のIBDでは、以下のような症状が見られます。
・慢性的な下痢
・嘔吐が続く
・食欲が落ちている
・体重が少しずつ減っている
これらは一見すると、軽い胃腸炎や食べ物の好みの問題と思われがちです。しかし、こうした症状が数週間以上続いたり、治ったように見えてもすぐ再発したりする場合には、IBDの可能性があるため注意が必要です。
特に、見た目には異常がなくても、腸の中では炎症が進んでいる場合があります。そのため、飼い主様が「性格的に食べムラがあるだけ」「ごはんが合っていないのかも」と考えてしまい、気づかないうちに病気が進行してしまうケースも少なくありません。
原因
IBDを引き起こす原因は、以下が挙げられます。
・食物アレルギー
・腸内細菌叢(腸内フローラ)のバランス異常
・免疫系の過剰反応
・遺伝的な体質
・ウイルスや細菌などの感染症
・慢性的なストレス
これらの要因が単独で、または複数組み合わさってIBDを引き起こすため、明確に原因を特定することは難しいです。
診断方法
IBDが疑われる場合、まずは血液検査や超音波検査などの基本的な検査を行います。これらの検査では、体内で炎症が起きているかどうか、消化器に異常がないかといった大まかな情報を得ることができます。
しかし、IBDかどうかを確定するためには、より専門的な検査が必要です。中でも特に重要なのが「内視鏡検査」です。内視鏡を用いることで、胃や腸の粘膜を直接観察できるほか、炎症が起きている部分から組織を採取し、病理検査(生検)によって詳しく調べることができます。
当院では、内視鏡検査を安全に行うために麻酔下で実施しており、検査前後には飼い主様に対して丁寧な説明を行うことで、不安や疑問にしっかりと向き合う姿勢を大切にしています。検査にかかる時間やリスク、検査後の管理についても事前に詳しくお伝えし、それぞれに最も適した検査・診断の方法をご提案しています。
検査や診断方法で分からないことがありましたら、いつでもお気軽にご相談ください。
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治療方法と予後管理
IBDの治療方法は、犬や猫それぞれの症状の程度や原因に応じて異なりますが、基本的には以下のような治療を組み合わせて行います。
◆食事療法
低アレルゲン食や消化器サポート食を使用し、腸への負担を軽減します。
◆薬物療法
ステロイド剤や免疫抑制剤を使用し、免疫の過剰な反応や炎症をコントロールします。
◆プロバイオティクス
腸内環境を整える善玉菌を補い、消化機能の安定化を図ります。
◆定期的な検査
定期的な血液検査や糞便検査を通じて、再発や病状の悪化を早期に発見します。
なお、猫に多く見られるリンパ球性腸炎では、特にステロイドによる治療が有効であり、症状のコントロールや生活の質を維持するうえで重要な役割を果たします。これらの薬は、獣医師の判断のもとで慎重に用量を調整しながら使用します。
また、IBDは「完全に治す」というより、「再発を抑えながらうまく付き合っていく」ことが重要です。治療を続けながら体調の変化を細かく観察し、必要に応じて治療内容を見直していくことで、生活の質を維持できるケースが多くあります。
まとめ
繰り返す下痢や嘔吐、なかなか改善しない食欲不振や体重減少など、こうした症状がある場合には、IBD(炎症性腸疾患)を起こしている可能性があります。
内視鏡検査を通じて腸の状態を直接確認し、生検によって確定診断を行うことで、より適切な治療方針を立てることが可能になります。早期の診断と治療によって、症状をコントロールしながら、愛犬や愛猫が快適な生活を続けられるようサポートすることができます。
当院では、飼い主様との丁寧なコミュニケーションを大切にしながら、安全で正確な内視鏡検査と治療を提供しています。「もしかしてIBDかも」と感じた場合には、どうぞお気軽にご相談ください。


